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『全館冷暖房 その2。』

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私が、全館冷暖房を意識したのは、

OMソーラーに出会ってからです。

ご存知のように、

OMソーラーは屋根にあたる太陽熱によって”空気”を温め、

ダクトで床下に送り込んで、

床下空間を利用して、隅々に行き渡らせるという、

画期的なシステムです。

「そよ風」も、同様のシステムで、

”空気集熱式換気暖房システム” と言います。



OMを知った約20年前、

某建設会社の豪華展示場で、豪華しつらえ品に反比例する

貧相な断熱仕様のお陰で、

足元に忍び寄る冷気に震えつつ設計業務に勤しんでいました。



リビングダイニングは、大容量のエアコンの力技で

それなりに暖かくなりますが、

北側に配置された、洗面脱衣、収納部分は、

外気温 = 室温

の寒さでした。

20年前の当時、北側の水回りまで冷暖房設備を備えるのは

確かにありましたが、

超!リッチ = 贅沢な提案でした。

住宅用のセントラルヒーティングもありましたが、

導入したのはいいけど、

使われずに、無用の長ものとなったケースも多く、

今から考えると、躯体性能を高めるという意識のない時代で

効きが悪く、消費電力がとんでもない請求になったため、

使わないままにされたのも、

当たり前ですね。



余談ですが、

冬場の寒い浴室をなんとかしたいと、

「風呂用ストーブ」

なるものも、実際にあります。

脱衣室には、天井付近に設置する「電気ストーブ」もありますね。

つまり、室内での寒さ暑さに対する不満は常にあったわけです。



そんな、耐え忍ぶしかない寒さ暑さに対し、

さんさんと降り注ぐ屋根での太陽熱利用、

(室内の日当たりがイマイチでも、

屋根にはたっぷりの日当たりってよくありますよね。)

床下空間を使って北側をも暖かくするという画期的な発想に、

素晴らしい!

と、思いました。



実際に、暖気を逃さないように施行された躯体に

(詳しい施行内容は省略します。)

床下から広がる暖かい空気によって

洗面脱衣も、トイレも、ほんのりと暖かい実際を体験した時、

あー、温度によるストレスkが提言されるって、

本当にリラックスできるんだ、とつくづく実感したのを

今でもありありと思い出せます。



家中の温度差が少なくなると、

家の中での移動が、苦にならないんですよ。



私の弟の家は、OMソーラーハウスで

入居後既に10年を超えましたが

(もちろん、私の設計+エヌテックの施工です。)

特に冬場に行くと、

今でも、特に1階では、トイレが寒くないのが本当に嬉しい。



高齢者である母も、

「あの家は、トイレが寒くないからええんよ。」

と言います。

年をとると、何が嬉しいって冬は寒くなく、夏は暑くないのが

一番なんですよね。



素敵なインテリア、内装、素材、建材・・・・・・・



それらはどれも視覚的な満足を与えてくれます。



しかし、人は暑い寒いを感じ身体は温度に反応し

汗をかいたり、震えたりします。

身体が受けるストレスは、精神的にもストレスとなるのです。

しかも、温度的なストレスは、

「素敵」

が、解決してくれません。



人は、素敵だけでは「住空間」における満足はできないのです。



設計的な素敵さ、と、温熱環境は比較して

どっちかを選ぶというものではありません。



温度からくるストレスを解消するのは、

躯体性能であり、設備であって、

意匠と相反するものではないのです。



あるお客様のご両親様の家にお邪魔した時のこと、

贅沢な建材を使用し、

素晴らしい意匠設計がされ、

計算されたプロポーションが醸す品格と言い、

それはそれはため息が出るような意匠設計でした。



しかし、いかんせん断熱気密の意識が薄かった時代のこと、

おざなりな(当時はそれが普通でしたが)断熱と、

アルミサッシの単板ガラスによる寒さ暑さは

相当なものでした。

例によって、エアコンが設置されたリビングだけが

使用可能な?空間となり、

激寒の廊下、トイレ(電気ストーブが入ってました)、

洗面脱衣室(個人的に一番問題だと思う)は、

夏も冬もできるだけ行きたくない場所となっていました。



これだけの資金が投入できたのであれば、

もっとお金の使い方があったのではないだろうか?

住まい手にとってのお金の使い方、

支払うお金で得る対価として

本当にこれで良かったのだろうか?



と、思わずにいられませんでした。



お子様(エヌテックのお客様)の家は、

冬場も家中の温度差が少なく、移動が苦になりません。

ご両親様がお子様の家での滞在時間が増えていったのは

当たり前ですね。



そして、2年前のこと、

東京である設備メーカーさんから、

「東京ではお客様の要望の中で、”全館冷暖房”が増えてます。」

という話を聞きました。



東京は大都会だけあって、

冬の寒さより”ヒートアイランド”的な夏の暑さが厳しい。



年々暑さが増し耐えがたさも増すような気象の中で、

寝苦しいと、翌日の仕事や活動に支障が出ます。

家で過ごす時間をもっと快適にしたい、

と思う気持ちが高まるのは当然と思いました。

建築自体の性能に対する意識が低く情報も少なかった頃と違い、

今は、住宅を高性能にし冷暖房を効果的に効かせる方法も

分かって来ています。




私が全館冷暖房の快適さを意識したのは、

「ホテル」(ビジネスでなくそれなりの価格を払うホテル)

に宿泊した時でした。




ふと気づいてみれば、

ホテルって、

部屋の中はどこも、

トイレも、洗面所も、ほとんど温度差がありません。

廊下も、ホールも、ダイニングスペースも、

ショップも、どこにいても、温度の差をほとんど感じません。

そういえば、ストレスを感じないなあ、と。



高級な宿泊施設になればなるほど、

見た目や備品のしつらえだけでなく、

温度によるストレスレスも、

重要なサービスの一つに違いありません。



旅先という異空間だけでなく、

家という、日常を送る最も配慮されるべき空間で、

どこもかしこも適温に保たれていること、

ストレスレスであることは、

住宅にとって、

「素敵と合わせて」

必須だと考えるようになりました。



意識しないこと、

何も感じないこと、

こそが、

最高の温熱環境であると、今は思っています。



次回は、その手法についてです。



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by ntecj-yoko | 2015-04-28 20:05 | 取り組み

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