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『建てた後から始まる、を考える。暖房・・・の前に。』

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梅雨らしく湿度が高い日が続きます。

湿度が高いことで汗が乾きにくく熱が体から逃げにくいため

(汗は、乾くときに潜熱を奪うため体を冷やす効果がある。)

汗が乾きにくいと熱中症の危険が高まりますのでご注意下さい。

水分補給に心がけるのを忘れないようにしたいですね。

さて、夏の連載もひとまず区切って、今度は冬の暖房についてです。

と、その前に!

とあるお客様から、気になる話をお聞きしたのでちょっとそちらから。

「聞いたんですけど、冬旨の(断熱性の高い)家は、夏が暑いんですよね?」

え?!

「だから、夏を中心に考えた家がいいんでしょう?」

吉田兼好センセイ恐るべし?!

・・・・・分かりました。

温熱環境が建築によるもので左右されるらしい ← ココ重要です。

ということを、感じていらっしゃることは分かりました。


これまで書いてきたことの整理です。

まず、冬の寒さ対策として断熱性を高めた家が暖かそう、はイメージで理解できますね。

となると、夏が暑苦しいのでは?と”感じる”(あくまでも感じるですが)・・・

結論から申し上げると、


冬が寒い家は、夏も暑く、

冬が暖かい家は、夏も涼しくしやすい(日射対策が出来ていることが条件)


です。

夏の場合を改めて考えてみます。

そもそも、どうして夏に家の中が暑くなるか、ですが

強い日射が建物を照らしつけ、窓から暑い日射熱が侵入します。

外壁、屋根、などにも容赦なく照り付けた熱が”輻射熱”となって室内に伝わってきます。

外気温が35度を超えるような猛暑になると、家の周囲も熱せられ

外気温以上の熱を持ちます。(アスファルト、コンクリートなど)

これらの蓄熱性のある素材は、素材の特質上昼間は熱を蓄え

気温が下がった夜になって放熱を始めます。

熱帯夜の原因のひとつです。

真夏の昼間に高温となった空気を入れる通風が室温上昇のげ原因になるだけで

”かえって危険”であることも書きましたが、

低断熱の家は、熱は高いほうから低いほうへ移動する物理現象そのままに、

弱い部分である、屋根、外壁、窓、隙間(気密性も低いと想定)から熱の移動が始まり

容赦なく熱が室内に侵入してきます。

熱は外部で遮蔽するのが効果的!といったハウツーをご存知ならまだ良いのですが、


「夏を旨とすべし」(by吉田兼好)


は、エアコン嫌い!通風が好き!とお考えの方は、兼好センセイの時代と様変わりしている

現代の真夏における”熱風”を室内に入れている可能性があります。

これは、脅しでなく命の危険もあります。

センセイの時代は、車の排気ガスもなけりゃ、エアコン室外機の排熱もなかったですしね。


しかし、すでに建ててしまった家が低断熱であれば、通風に頼るのはおススメしません。

頭を切り替えてエアコン(冷房)を適切に利用して下さいね。

前も書いたように、周囲を緑でいっぱいに囲まれた条件であればまだよいのですが

街中だったり、そこそこの団地であれば周囲はアスファルトの道路の可能性が高く、

(エヌテックでは測定したことがありますが)

道路の温度は、60度近くにもなっており裸足で歩けない状態で、

低断熱であればあるほどそんな熱が家に侵入してくるわけです。

断熱性能が高いと、外気温の影響を受けにくくなっていますから「日射遮蔽」に配慮すれば

室温上昇をかなり防げますし、エアコン冷房も効きがよく冷機も逃げにくいため

涼しさが長持ちします。

逆に低断熱で隙間が多い家は、外部の熱の影響を受けやすく冷気もキープしにくく

高断熱の家に比べて省エネ性が低くなります。

こういう家に居住されている方で、寒い!暑い!と嫌気がさしていれば良いのですが、

自然な状態を良しと考えて 「我慢強い」 場合があり、

ご本人が気付かないうちに家の影響を身体的に受けているかもしれません。

我慢もほどほどに。


あと、気密が甘い家は、「冬旨」の家ではありません。

暖房が効きにくいからです。

暖めた空気は軽く上に上がっていくことはご存知かと思います。

暖房すればするほど、空気は膨張し軽く上昇し(熱気球がまさにこの原理を利用)

それによって押し出された空気を補おうと(これもれっきとした物理現象)、

隙間から冷たく重い空気が進入し床付近に滞留します。

いくらエアコンやストーブで暖房しても天井付近ばかりが暖かくなって頭が暑く

足元が冷え冷えするのはこの現象のためです。

せっかくのエネルギーを使って暖めた空気を逃がさないようにしてやることが

効率良く(つまり省エネに)暖房が出来て、ムラなく温まる秘訣です。

冬に暖かく、夏に涼しい家にするには、「断熱+気密」がセットでなければなりません。

あと、夏を涼しくするには

「夏季日射取得係数」(μ値)、

「冷房期の平均日射取得率」(ηA値)

などで示される、日射をいかに室内へ入れにくい設えになっているか、

が、すごく重要ですから

μ値やηA値(数値が小さいほど日射が入りにくいことを示します)で確認して下さい。

日本の夏は高温の上に多湿でかなり厳しいため、

いかに日射が室内に入りにくくしておくかは必須事項です。

広島は瀬戸内気候と呼ばれなんとなく温暖なイメージがあるようですが、

広島と一口に言っても広く、広島市、東広島市、呉市、三次市、・・・

省エネ地域区分も違うほど、違います。

また、くどいですが、広島市内でも周囲の環境によって様々です。

窓を開けて通風をすれば排気ガスや埃だらけになる都心部では、

窓は開けない方が温熱的にもそ良さそうですし、健康的でもありますね。

なので、広島というヒトくくりでなく、居住環境にあったあり方を考えるのが適切です。

建築(居住環境)は一面、熱などの物理現象との戦いでもあります。

なんとなくのイメージに左右され、

立派な構造材や床の間、すばらしいキッチンやインテリアでありながら、

窓はアルミの空気層の薄いペアガラスだったりと

コストの掛けどころが、温熱環境を重視しなかった結果は、

居住しているご家族がダイレクトに影響を受けるのです。

電気代などのランニングコストが嵩むのも困りますけど、

やっかいなことに暑い寒いは身体的にも影響があるのです。

住まい手が結果を理解の上でのコストバランスなら仕方ありませんが、

たいていの場合、分かってなくて住んだ結果ビックリ!ではないでしょうか?

「我慢」がお好きならおもかく(そんな方は基本的にいらっしゃらないはず)、

正しく理解して夏は夏の、冬は冬の快適な温熱環境を作って下さいね。







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by ntecj-yoko | 2014-06-28 15:37 | 取り組み

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